専門領域ワーキンググループ
京都大学および関連施設での頭頸部外科学の診療技術の底上げ、トップレベルの医療技術の共有、臨床研究デザインと成果発信を目指して、2016年4月に6つの専門領域ごとに関連施設を横断したワーキンググループを構築し、活動を続けています。一名の座長と各施設から代表医師数名に参加していただき、合議により今後の活動を決定するという方式を取っています。各グループごとにテーマを設定してを定期的な話し合いを行い、共同研究や手術見学などの交流も円滑に行えるようになっています。また各施設のデータを集積して解析することで多くの知見を得ており、英文論文として発信しています。
オーガナイザー
大森 孝一(京都大学)
活動方針・目標として、第一に耳科治療前後の生活の質(QOL)評価を多施設共同研究で行っています。難聴者用の質問紙SSQの日本語版の妥当性を評価するとともに、鼓室形成術・人工内耳手術・アブミ骨手術など手術前後のQOLの変化について質問紙を用いた調査を行っています。第二に希少疾患の調査を行っており、側頭骨内顔面神経鞘腫、先天性真珠腫、先天性内耳奇形(Incomplete Partition Type 1など)の臨床統計を予定しています。
鼻科WGでは、京都大学および基幹病院における鼻副鼻腔手術の標準化並びに手術技量の向上を目指しています。定期的なミーティングを行い、情報交換を行っています。良性腫瘍で最も頻度の高い鼻副鼻腔乳頭腫の術式と予後につき、多施設で調査を行うことを検討しています。
咽喉頭疾患の中でも特に睡眠障害や音声障害を対象として、臨床研究に取り組んでいます。音声障害に対する聴覚的心理的評価法は簡便かつ有用な検査方法ですが、American Speech-Language-Hearing Associationで開発され、世界中で用いられている聴覚的心理的評価法CAPE-V(ConsensusAuditory Perceptual Evaluation of Voice)の日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を検証しています。また音声は咽喉頭疾患の診断において非常に重要な診療情報となりえるため、WG参加関連施設で集積した音声データを用いて、深層学習による音声障害診断システムの開発に取り組んでいます。
関連施設の多くが頭頸部がん指定研修施設・準認定施設であり、頭頸部癌の症例数が非常に多いのが特徴です。各施設のデータを集積・解析することで、多くの知見を得ることができます。これまで希少癌(耳下腺癌、悪性黒色腫など)の治療成績、頭頸部癌に対するニボルマブの効果について報告し、現在も複数のプロジェクトが動いています。グループ内には頭頸部手術のエキスパートが多数おり、その手術を見学し、研鑽を積むことも可能です。今後多施設共同での前向き試験の実施も考えています。
関連病院でのめまい診療の底上げを目指して、漏れなく診察ができる目安として、めまい初診時チェックリストを作成しました。関連病院から集計した記入済みのチェックリストを検証し、各疾患の診断の鍵となる項目の選定を試みています。
さらに、前庭性片頭痛、持続性知覚性姿勢誘発めまいなど新しく提案されている疾患概念を盛り込み、チェックリストを洗練化させています。
若手医師の嚥下診療レベルの底上げを目指して、 嚥下機能評価講習会の受講や、嚥下医学会相談医、摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の取得を指導しています。また、入院時全例嚥下スクリーニングの啓蒙: 入院患者の窒息事故予防のため、入院時に全患者に対し嚥下スクリーニングを行う試みを行っています。嚥下リハビリテーションの有効性を研究する研究にも取り組んでいます。