喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法 : A 検査法 :3 声の能率
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どれだけの気流を使ってどれだけの強さの声を出したか. つまり体積速度平均値 (又は直流分といっても良い) で, 体積速度の振巾, 正確には交流分の実効値を割ったものを声の能率と定義する事ができる. 今声門体積速度波を三角波と仮定しこの関係を検討してみる. 図90は面積 (体積速度) が同じ波形4種を例示し交流分つまり音の強さがかなり異なって来る事を示したものである. まず OQ (opening quotient)で声の能率は変って来る. 閉鎖期が長くなれば波高は高くなり音は強くなり能率は良くなる. 3段目の如く声門が完全に閉鎖せずたえず気流が流れるとさらに能率は悪くなる. これを数式で表わすと
fac (t ) = [ f (t ) - f (t )] = k/T - (4k /T 2)t
rmf of fac (t ) = (1/T ∫0T f 2ac(t )dt)1/2 = k /(√3・T )
rms of : 実効値
f (t ) = 1/T
声の能率 = [f 2ac(t )]1/2 / f (t ) = k / √3
以上は既に詳しく発表したところである.
OQ との関係については Flanagan がすでに計算している. OQ ≡ φ とすれば
[f 2ac(t )]1/2 / f (t ) = ( (4 - 3φ) / 3φ )1/2
となる.
今, 両式を連続的にグラフで示せば図91の如くなる. 中央より右寄りの縦線は最小声門面積 (minimal) が0の線である. 換言すればこの線より向って左は声門閉鎖不全を意味する. この図で示す如く能率が 0.5 以下では声門閉鎖不全がある事を示す. また能率と実際の声の相対的強さの関係を示すため右に実効値をデシベル単位で示した.
これらの理論値と臨床データと比較すると極めて興味深い. 臨床的にも嗄声とくに声門閉鎖不全の関与の大きい嗄声では能率は必ず0.5以下であった.
実用的見地から, 熱線流量計出力の DC 分と AC 分とをメータで直読し直ちに能率を 計算できる様にした.
図92に反回神経麻痺例の呼気流率, DC, AC 分の読みを例示する.
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