喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法実験12 熱線流量計について
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図86は Sondhi Tube は取り除き熱線附近の音圧を一定にした際の流量出力の周波数特性を示したものである (前記, 松下電子部品音響研究所), つぎに本学工学部田畑孝一氏に依頼し, 流量計を無反射管に接続, N2ガスを流しながら発声, 折り返し現象の起こらぬ様にし, 流量計の出力を A-D 変換, 計算機処理による逆フィルター回路を通し声門波を求めた. その結果は図87の如く流量計の出力と声門波は極めて近似し, 共鳴周波数特性は平担で流量計と無反射管とを連結して用いる事の妥当性が明らかになった. 無反射管のない場合の流量計出力と逆フィルター後の声門波形例を図88に例示す. 図89にその際の共鳴特性を示す. つまり無反射管のない場合には 250Hz 及び 600Hz 付近に共鳴のピークが認められた.
無反射管に流量計をつないだ場合, 正常者でも声門閉鎖期に流量は完全には0にならない事がある.これには目下2つの理由が考えられる.
(i) 無反射管の終末瑞には空気抜けのチューブがつけてあるが, これがやや細いため, 気流抵抗となり, 無反射管内の気圧は上昇する. 声門閉鎖期に気流が管内に流れ込まなくても圧縮された管内空気が終末端の穴よりなお流出するため, 結果として, 流量計出力は DC がたえず重畳した様になる.
(ii) 無反射管といっても完全無反射ではないのでなお逆方向の反射波が若干あり, それが折り返され (流量計では進行波として正の方向に現われ), あたかも若干の DC が重畳しているかの如く見える.
なお完成品を得るためには改良を重ねる必要があるが, 生理実験ならびに臨床応用例からして熱線流量計は特に次の情報を得るのに有益である.
流量計出力が厳密に0にもどらぬからといって声門閉鎖不全とはいえないが (理由は既述), 0にもどれば声門不全はないと考えられる.
オッシロスコープ上または DC 電圧テスター (又はディジタルテスター) で簡単に読み取れる.
理論的には共鳴の問題, 周波数特性, 直線性などの問題, 反射波 (マイナス気流)の折り返しの問題があるが, 実際臨床症例では正常者との差が大きく, ある程度, 経験的, 統計的立場から無反射管と併用した場合, しない場合各々の正常域を求める事が許される.
喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法実験12 熱線流量計について
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