喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法 : A 検査法 : 6 喉頭鏡検査
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間接喉頭鏡検査 : 最も重要な検査だが特記すべき事はない.
振動中の声帯を静止状態であるいは遅い動きにかえて観察する方法であるが, 器種によりかなり作動原理が異なるので注意する必要がある. Timcke 4型ストロボの場合の作動原理を示したのが図96である. 上にストロボ発光の瞬間をフォトトランジスターでとらえ, 下には音声波形 (気前音) を示してある. 音声波形の同位相の瞬間に約 80μsec 発光している. ペダルを押すと発光点が前進し, 一杯にふみ込むと1周期ないし 1.2 周期前進し, ペダルをはなすと又逆方向にもどる. 換言すればペダルをふむ事により声帯振動の1周期を観察できるが, 離せば逆現象つまり非現実的イメージを見る事になり, ペダルを早くふんだり離したりする事は混乱を来す因となる.
ペダルをふむ時のみ観察すべきである.
当然の事ながら原理的に, 基本周波数変動の著しい嗄声では声帯を静止状態で観察する事はできず, また高度気息性嗄声 (ピッチ測定不能のもの) でストロボスコープを使用する事はかえって誤った判断を下しかねない. なぜならば声門閉鎖不全高度で高度気息性嗄声の場合, ストロボでみれば, 音声に周期性がないので声帯は殆んど全く振動していない様であるが, 高速度映画撮影を行えば声帯は多くの場合, ある振巾をもって振動している. 周期性 (静止可能かどうか), 左右位相のずれ, 振巾(大小,左右差), 粘膜波動, 声門完全閉鎖の有無が観察の要点である.
光源をグラスファイバーで送り, プリズムを利用して声帯を観察する喉頭鏡はかなり数多く作られているが (Gould 式, 永嶋, Burton, Storz) 何れも, 前連合が良く見える利点がある (図174). 今後, 頻用されるであろう. 我々も永嶋式を試用し, 喉頭の詳細にわたる観察がより容易になったと思う. 間接喉頭鏡で見にくい人でも, よく見える事が多い. 乳幼児の喉頭先天異常を永嶋 SFT-1 喉頭境で診て始めて診断し得た事もある. ビデオに撮ってみると間接喉頭鏡所見より立体感がよく判る. 間接侯頭鏡, 直達鏡, 側視型 (永嶋 SFT-1 喉頭鏡), 高速度映画撮影法 (2回反射する) の所見は左右前後が複雑に異るので注意を要する (図97).
撮影の技術面についてはすでに本多らにより発表されているので省略する.
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