喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法 : A〕検査法 :7 喉頭の断層撮影
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喉頭腫瘍伸展範囲を診断するため, 喉頭断層撮影, 造影撮影 (ラリンゴグラム), ないしゼログラムは極めて有用であるが, 腫瘍はさておき, 主として反回神経麻痺時におけるレ線診断の意義についてのべる. 詳細はすでに, 石川ならびに筆者により発表された.
声帯麻痺患者で発声時喉頭断層撮影を行うと声帯レベル差を認めるものがかなりある. 左右声帯レベル差を認めないものが全体の 53.6%, 麻痺側が高いものが 46.4% であり, 麻痺側が低いものは一例もなかった. とくに麻痺声帯位が側外方にある程, 肺痺側高位傾向が明らかになる. この臨床所見ならびに, 輪状披裂関節の形態すなわち円柱状であるため声帯外転時には声帯突起は挙上するという所見 (次章参照) からして, 左右声帯レベルが麻痺声帯位によって異なる事は充分理解できる. その他, 前筋, 喉頭外筋の影響も考えられる. さて声帯麻痺に対する手術的療法として次章にのべる甲状軟骨形成術I型を行なっても, 声帯レベル差は矯正されない. その解決法としては, 1) 輪状甲状軟骨間距離短縮術を追加する. 2) 披裂軟骨回転術を行う. の2法が考えられる. 手術々式を選択するためにも術前に声帯レベル差の有無を知る事は必須である.
レ線診断により, 上記に関する所見が得られる. 我々の成績では全体の 37.5% に麻痺側声帯萎縮 (健側の代償性肥厚でないとはいえないが) を認めている. また 74.1% に麻痺側喉頭室拡大を認めている. これらの所見を参考にして, 甲状軟骨形成術I型の際の楔の厚み (陥没程度の決定) を決める必要がある.
喉頭断層撮影所見とくに左右声帯のレベル差は前頸部皮膚より 1〜1.5cm の所で最もよく現われる.
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