喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法 : A 検査法 :8 喉頭のマニュアルテスト
← : 7 喉頭の断層撮影
→ : 9 前筋麻酔テスト (一色)
上記の種々テストにより, 声門閉鎖度, 声帯物性, 非対称性, 声帯運動性, 声帯のレベル差などについて,およその診断がつく. しかし各種手術適応の決定に当ってはこれらテストのみでは不充分で, 喉頭のマニュアルテスト (用手検査法) は欠かせないものである. 経験的にもマニュアルテストの結果は手術の結果を予見する上に非常に役立っている.
右手で両甲状軟骨翼をはさむ様につかみ, 翼を両側より圧迫し声の変化を見る. 圧迫する高さが微妙に影響し, 例えば上方すぎると仮声帯が接し, 硬起声〜圧迫起声の様な過緊張性音声障害を来す. 圧迫する高さを色々変えてみる必要がある. 声の変化が良く判らぬ時は, 圧迫していた指を急に離してみる. 通常声門閉鎖のみあるいは他の因子の関与度が極めて少い時 (例えば反回神経麻痺) にはこの側方よりの圧迫で声は改善する. 声の改善度が低い場合には次の如く, 1) 前筋も関与してるか, 2) 物性関与が大きいかどうかを検討する.
左手で甲状軟骨上縁をおさえ, 右示指を輪状軟骨下縁に接し上方に押し上げ, 輪状甲状軟骨間距離を短縮せしめる (図100). 中央又は左右どちらかに偏して行う事もある. 蛋白同化ホルモン等で声が低すぎの際に, 本法で声が明らかに高くなればIV型の適応といえる. 反回神経麻痺とくに中枢性と考えられる際には声帯不動で声門間隙が大きいのみではなく, 声帯の極度の弛緩が合併している事もある. この際には上記の声帯の側方よりの圧迫と, 輪状甲状軟骨間接近法を同時に行ない声の変化を見る (図101).
声の高すぎ (変声障害など), あるいは過緊張性音声障害では甲状軟骨の正中中央部を脊側に向って圧迫し声帯を弛緩せしめ声の変化を見る. 用手検査で声が全く変らぬ場合には声帯自身の瘢痕化 (たとえば外傷性) などによる事が多く, 各種手術の予後もあまり良くないと考えるべきである. 目下の所, 用手テストで不変の場合は手術の適応外としている.
喉頭機能外科 : IV 発声障害検査診断法 : A〕検査法 :8 喉頭のマニュアルテスト
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