喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能外科 : 8 その他の手術経験 : A 声帯横隔膜症に対する手術
: VI-8 その他の手術経験
: VI-8-B 仮声帯肥厚について


VI-8-A 声帯横隔膜症に対する手術

先天性の巾の広い症例, 外傷後症例, 進行中の腫瘍によるものなどは予後が悪いが, 両側声帯ポリープ術後などの症例では予後は良い.

手術手技

経皮法と経口法があり, 軽度癒着の場合は経口法で充分であるが, 癒着が広範囲の場合には経皮法, 喉頭截開術下に手術した方が確実である.

喉頭截開術

最も重要な事は声帯前連合で左右に偏せず切開する事である. その要点は自明の事だが,

  1. まず甲状軟骨のみを切る. 化骨化している場合は図180の如くエシジンバーで軟骨のみを切る.
  2. 輪状甲状軟骨間膜より上方に切開, 声帯前連合と考えられる高さに達すれば下方よりのぞきながら正確に正中で切断する.

薄いエリコン板に直針で2本糸を通し, 甲状軟骨の上下より糸を皮下に貫通させ, 上下, 各々ボタンを通し糸を結び固定する (図181). 上下別々に固定しないと糸がループになりエリコン板が上下に移動する事になる. エリコン板留置期間は前連合創面の広さ種類による. 声帯ポリープ後の癒着例 (症例15) では2週間で充分であった. 2年後も再癒着の傾向は全くない. 外傷性, 先天性などの場合には最低1ヶ月は留置する必要があろう.

症例15 Y.I. 58才

女性は両声帯ポリープ術後の前連合横隔膜症だが術前 R 0.8, B 1.5, A 1.0, D 2.3 が術後3ヶ月 R 0.2, B 0.4, A 0, D 0.6 とほぼ正常声となった. これに反し,喉頭乳嘴腫掟例 (症例33 K.T. 男性) では, 横隔膜切断, 癒着防止により, 気道は確保され気管切開口は閉じる事が出来たが, 乳嘴腫再発もあり, 音声の改善は著明ではない (R 1.2, B2.6, A 1.0, D 2.8 より R 1.6, B 2.0, A 0.3, D 2.2).


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Last update: March 12, 1999