喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能外科 : 8 その他の手術経験 : B 仮声帯肥厚について
: VI-8-A 声帯横隔膜症に対する手術
: VI-9 人工筋の問題


VI-8-B 仮声帯肥厚について

仮声帯肥厚が嗄声の主因と考えられる2症例の経験を基に, 仮声帯音声障害のメカニズムについて記す.

症例34 M.M. 47才 男性

外傷後声帯麻痺に対し声帯シリコン注射をうけ, 嗄声度は一層ひどくなったという.

高度気息性嗄声である. 片側声帯麻痺の他に両仮声帯肥厚著明で声帯は健側が見えるのみである. 断層撮影で喉頭室の完全消失を認める. 喉頭截開術により声門腔に達するに仮声帯肥厚著しく声帯と密接押し合った形で喉頭室は全くない. 仮声帯を広範囲に切除したがその組織所見は図182に示す如くである. 麻痺声帯内合成物質注入療法の危険性を示す症例である. 声注が仮声帯に入ったか, 声帯に入ったものが移動したか不明だが, 文献上からも後者の可能性も充分考えられる. 第2例は

症例44 Y.A. 女性

両仮声帯アミロイドーシスによる肥厚例であるが, やはり仮声帯肥厚とくに上下の厚さの肥厚のため声帯運動が全く阻害されていた. 喉頭截開術下に仮声帯を大きく切除, エリコン板を前連合に約 2W 留置した. 声は非常に出しやすくなったというが, なお気息性嗄声である.


【まとめ】

前連合癒着 (声門横隔膜症) の留置は 経皮的 (膜が広く, 厚い時), 又は経口的にエリコン板の留置を行う.
ステント (エリコン薄板) の留置は ポリープ術後などは 2W 以上, 他の場合は最低1ヶ月間は必要.
仮声帯肥厚により喉頸室消失を認める場合には 喉頭截開術下に仮声帯の思い切った広範囲の切除, 断瑞縫合が必要.

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Last update: March 12, 1999