喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能外科 : 9 人工筋の問題
: VI-8-B 仮声帯肥厚について
: VII 発声障害における心理的要因


VI-9 人工筋の問題

会話時声門の開閉運動は極めて複雑で, 精細な時間的コントロールが行なわれている.しかしながら発声時一側の声帯を正中部に固定すれば, 精細な時間コントロールは反対側声帯により行なわれ何等支障を来さない. 従って麻痺声帯に対しては発声時正中位, 呼吸時開大位といういわば (+), (-) の単純な関係で事は足りる. 人工筋といっても手の様な複雑なメカニズムは不要なのである.

将来の可能性に対する試みとして, 人工筋を高研, 秋山太一郎博士に依頼作製した. 原理を図183に示す. 人工筋の写真を図184に示す, 金属部分が約 2cm と小さなものである. 将来の計画としてはこれら (シリコン製) 全体を体内に埋没せしめる. 発声しようとする際バルブを押せば中のカフが膨らみ, 中心の棒は下方に 5mm 引き下げられる. 中心棒の先端を披裂軟骨筋突起に接合しておけば, たとえば肩部にうめられたバルブを圧迫すれば声帯は内転, 発声準備状態となる.

電気刺激により収縮する物質の開発などにより, より現実の問題として取りあげられる日が来るであろう. 目下はシリコンの体内持続留置の問題, 披裂軟骨との連結の問題,さらに広い観点からはエネルギー供給の問題, トリガーの問題 (例えば健側筋の放電を利用して患側人工筋をトリガーする) など残された問題は多い.


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Last update: March 12, 1999