喉頭機能外科 : III 発声障害のメカニズム : III-6 声帯の減衰率 (damping ratio) などについて
← : 実験9 声門部乱流雑音発生実験
→ : 実験10 声帯の減衰率
声帯振動機構とくに病的機構の場合, 声帯物性のうちどの因子がどの様に変化したかを知る事により, 真の理解が得られる. 声帯の減衰率も重要な声帯物性の1パラメターである.
ゴム糸を張って, 中央部をはじいてやればゴム糸は振動し, 徐々に減衰し (振巾が小さくなり) 遂には静止する. 減衰率が0ならば, いつまでも固有振動を続け, また1以上では全く振動せず, 時間経過とともに元の位置にもどる. 声帯の場合でも減衰率により振動機構とくに振動し易さが大きな影響をうける. 大きな減衰率では振動し難くなるが, 又あまり小さな減衰率でも, 左右声帯 (特に非対称の場合) の結合 (カプリング) の問題, ピッチコントロールの問題もあり, 発声に必ずしも有利とはいえない.
発声の計算機シミュレーションとくに病的状態を模するには, 何よりも生体に近いパラメターを選ぶ事が大切である. モデルも生体と同程度に障害され易くなければならない (vulnerable). さて以上の考えに基づき, 次の如き方法で摘出人喉頭の減衰率を求めた.
喉頭機能外科 : III 発声障害のメカニズム : III-6 声帯の減衰率 (damping ratio) などについて
← : 実験9 声門部乱流雑音発生実験
→ : 実験10 声帯の減衰率