喉頭機能外科 : III 発声障害のメカニズム
: 実験1 声門部陰圧に関する実験
: III-1 声門閉鎖不全


III 発声障害のメカニズム

【疑問点】

嗄声ないし失声の原因は何か. 嗄声患者の間接喉頭鏡所見は殆んどの場合, 声門閉鎖不全を伴っている事から, 嗄声の原因は声門閉鎖不全にあり, 隙間から絶えず空気が漏れるため効果的に気流を断続できなくなり, 又雑音を発生し嗄声を来たすと考えられる. 所が声門閉鎖不全の程度と嗄声度が一致しない事も臨床経験からして明らかである. 急性喉頭炎では声門閉鎖不全は殆んどないにも拘らず, かなり高度嗄声を来し得るし放射線治療後の瘢痕化, 乾燥化した声帯では声門閉鎖不全に比し極めて高度な気息性嗄声を来す事もある.

失声症で声門が完全に閉鎖しているにも拘らず全く声が出ないとなると, 全く説明がつかず原因は心因性であるとして説明がついたかの如き錯覚をもってしまう.

しかしながら声帯振動 (発声) という現象は最終段階では全く物理的現象であり, 例えば失声の根底に心因的要因があるにしろ, 声帯が振動しないという場合, 必ず声帯が振動しない物理的条件が整っている筈である.

声門閉鎖不全はストロボスコピーで確実に見えるが声帯の物性については間接喉頭鏡のみでは簡単には判らない. 所がこの物性によって大いに影響され, 声帯は振動したり, しなかったりするのである. 声帯の振動しにくい条件, 嗄声ないし, 失声を来す物理的条件を知る事が, 音声外科診断の第一歩ともいえる. 以下嗄声を来たす要因について逐次検討する.


喉頭機能外科 : III 発声障害のメカニズム
: 実験1 声門部陰圧に関する実験
: III-1 声門閉鎖不全


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Last update: March 16, 1999