喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能外科 : 4 声帯緊張弛緩術 : A 変声障害 (高すぎる声)
: 実験16 甲状軟骨縦帯状切除 (甲状軟骨形成術 III 型) の音声に及ぼす影響
: VI-4-B 過緊張性音声障害


VI-4-A 変声障害 (高すぎる声)

症例29 N.I. 13才 男子

変声後も声が高すぎて来院. 声帯運動は左右対称的で一見異常はない様だが発声時, 線状の声門間隙を認める. ストロボ所見: 声帯振動振巾小, 左がやや大, 辺縁移動なし.位相のずれなし. 用手検査では側方よりの圧迫よりも, 甲状軟骨中央部を脊側に押した方が声の高さは低く, 音の強さも増す. 甲状軟骨形成術 III 型の適応と考え III 型を行なう.

手術手技

甲状軟骨形成術 I 型に準じた切開で左甲状軟骨翼を広く露出, 正中より 6mm 離れた左側で縦切開2本を加え 1mm 強の縦長軟骨片を切除. 甲状軟骨下 (尾側) 半分では側方軟骨翼が正中寄りの下 (内方) にもぐる様に一部重ねる様にし, 切断瑞を 4-0 ナイロン1本のマットレス縫合で固定する. 声は著明に低く, 且つ気息性が消失した. 術後ストロボ所見では辺縁移動を認め, 右は位相早く, 振巾もやや右が大きい. 声の高さは術前 275Hz より術後 97Hz へと下降し, 本人も満足した. そのソナグラムを図159, 160に示す.

症例13 T.T. 17才 男性

13才頃変声期に入り, 大声を出す機会が多かった所, 声が翻転する様になり, 長時間話した後には殆んど無声となる. 声が無力声で, 異常に高い. 喉頭鏡所見では声帯萎縮, 声帯皺を認め, ストロボ検査では声門閉鎖不全があり辺縁移動はない. 声帯モリヨドール注入するも依然として声が高いため, 両側前筋に 0.5% キシロカイン各 2.0cc づつ注射した所,著明に声は低くなった. そこで局麻下に右前筋を切断, 声は低くなった. さらに左前筋にキシロカインを注射すると声は著しい気息性嗄声となった. そこで一側前筋のみの切断で術を終了. 術後声は著明に低くなり改善したがなお声門間隙を認めたのでモリヨドール 0.5cc 注入1回, と発声訓練を行ない声は正常となった. 声の高さは /ア/ ―発声時術前 287Hz が術後 110Hz となった.

症例10 X.Y. 27才 男性

12才頃より声が割れ, 裏声の様な声になった. 弟も同様非常に高い声である.

喉頭鏡所見では声帯皺を認め発声時楕円形間隙を認め, ストロボ検査では声帯辺縁移動を認めない. 局所麻酔下に手術, 甲状軟骨正中部で, 声帯前連合を含む様, 矩形 (横 10mm×縦 7mm) 切開を加え, その正中矩形軟骨辺を陥凹せしめた. 声の高さは術前 233Hz が術後 193Hz と下降したが, 声の印象としてなお高すぎの感じが残った.

手術法としては症例29の如く縦帯状切除 (vertical strip excision), 場合により (声門間隙あれば) 側方翼を正中側の内側へすべりこませる slipping (一種の lateral compression) を追加する手術が良いと思われた.


【 まとめ 】

声を低くする手術法は 甲状軟骨の縦細帯状切除 (vertical stripexcision) が最も良い. (図153の3)
軽度声門閉鎖不全を合併している場合には 上記手術にきらに側方翼片を正中片の内側にすべり込ませる slipping を行なう.
片側か両側に行なうのか 通常片側 1〜1.5mm のトリミングで充分である. 片側に行なっても2重音声などを来す事はない.

喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能害外科 : 4 声帯緊張弛緩術 : A 変声障害 (高すぎる声)
: 実験16 甲状軟骨縦帯状切除 (甲状軟骨形成術 III 型) の音声に及ぼす影響
: VI-4-B 過緊張性音声障害


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Last update: March 12, 1999