喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能外科 : B 甲状軟骨横径拡大術
: VI-5-A 輪状甲状軟骨接近術-cricothyroid approximation
: VI-6 複合型


VI-5-B 甲状軟骨横径拡大術

手術適応

声帯萎縮などを伴っている場合, 声帯の内方移動 (甲状軟骨形成術 I 型) と甲状軟骨翼を前後に拡大, 前連合の前方移動により声帯緊張を試みる場合.

手術手技

甲状軟骨, 輪状軟骨を露出後, 甲状軟骨を縦切開, 慎重に剥離し (図169, 170, 171)エリコン片を挿入し, マットレス縫合で固定する (図172). 断面で示せば図173の如くなり, 声帯内方移動と甲状軟骨の前後径の延長が得られる. しかし実際の症例 (36) では声の質は改善したがなお, 声の高さが充分高くならないので, 輪状甲状軟骨接近法 (ナイロン糸3本) を追加した. 術後声の高さはかなり高くなった. 術後しばらくはやや発声に努力を要する (恐らく高い声門下圧ため) といっていた. 図174は症例36の術前所見である.図175, 176は同症例の術前術後のソナグラムである.

考按

全体の経験を通じての印象を列記する。

  1. 人間では輪状甲状軟骨を寄せるのにかなりの抵抗があり, 糸は1本では足りない.
  2. 一年後も声の高さに変化なく, 緩むという心配はあまりないが, 3〜4週でややゆるむ事がある.
  3. 話声では特に声の高さが単調になるという事はない. (声域は測っていない.)
  4. 声を高くするには甲状軟骨翼を前後に長くするよりも輪状甲状間接近術の方がより効果的である.
  5. 若い女性の男性化音声には積極的に行なう価値がある.
  6. やや効果不充分例はあったが合併症, 副作用は経験していない.

【まとめ】

若い女性の低すぎの声 (ホルモン作用, 前筋麻痺) は 輪状申状軟骨接近術により効果的に改善される.
手術手技のコツは 3-0 ナイロン糸4本 (マットレス) で両軟骨間をゆるまぬ様充分短縮する事

喉頭機能外科 : VI 喉頭の機能外科 : B 甲状軟骨横径拡大術
: VI-5-A 輪状甲状軟骨接近術-cricothyroid approximation
: VI-6 複合型


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Last update: March 12, 1999