難聴
難聴と認知症の関連は以前から注目されており、難聴が認知症のリスク因子としてあげられています(Lin 2011, Livingston 2017)。
広く用いられる認知機能評価尺度には音声による課題が含まれ、難聴者では認知機能が実際より低く評価される可能性があります。より多くの認知症スクリーニングのために、検者の熟練度に依存しない評価法の開発が必須です。さらに早期介入のために中年期以降の難聴者から早期の認知症を特異的に選別できる検査機器の開発が待望されています。
我々は平成28-30年度のAMED認知症研究開発事業の採択課題で難聴者に使用可能な新しい認知機能評価尺度を開発し、新規尺度をReading Cognitive Test Kyoto(ReaCT Kyoto)と命名しました。この研究では、従来から用いられている認知機能評価尺度であるMMSE-J、および専門医による認知症診断と比較し、ReaCT Kyotoの妥当性と信頼性を検証しました。
また高齢者では認知症と難聴が高頻度に合併するにもかかわらず鑑別は容易ではありません。認知症と関連をもつ難聴の病態を簡便に鑑別できる評価尺度の開発が急務です。ReaCT Kyotoと併用して、認知症に特異的な聴覚伝導路の機能低下を鋭敏に検出できる検査法の確立を目指しています。