喉頭機能外科 : V 喉頭機能外科に必要な解剖 : A 喉頭とくに軟骨の計測 : 6 輪状披裂関節と披裂軟骨
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古い教科書では披裂軟骨は垂直軸 (craniocaudal axisis) のまわりを回転 (rotation) する様に記載されている. この模式的説明は披裂軟骨筋突起の前内方または後内方の変位により声帯が内転あるいは外転する事を理解するのに確かに便利である. しかし実際の披裂軟骨の運動はそれ程単純ではなく, ほゞ円柱状の関節面上をその長軸 (内後上より外前下へ向う) の周りの回転 (rocking motion) が主で他に平行のすべり (sliding) である事が明らかとなって来た (Snell 1947, Sonesson 1959, Frable 1961, von Leden and Moore 1961, 高瀬 1964) (図109).
輪状披裂関節面の大きさについては上記文献の他に男女差別に記載されている Maue らの計測報告がある. 男女別で比較しやすいので Maue らと我々の計測値を表8に示す.
両計測値は比較的よく一致しており輪状軟骨の関節面は縦長 (長軸) であるがその上にのっている披裂軟骨関節面は縦横の長さの差のあまりないほゞ円形といってよい凹面である. 何れにせよ横径は披裂軟骨の関節面の方が輪状軟骨の関節面より長く, 縦径は逆に輪状軟骨関節面の方が披裂軟骨のそれよりはるかに長いのは上述の文献すべての一致する所である.
Woodman 手術などでは一旦, 筋突起に至りさらに披裂軟骨の部分的除去により声帯突
起近辺まで達する事がしばしばある. この際, 声帯粘膜を突きやぶり気道内に入ってしまうと種々の合併症が起こり得る. この防止策として, 声帯突起の位置を正確に予測する事が極めて重要である. 我々の計測値と Maue らのそれとを再び併記する
(表9). 両者の値は比較的よく一致している.
筋突起より内方, 男では 12〜17mm, 女ではほゞ 10〜15mm の所に声帯突起がある事を憶えておく必要がある.
披裂軟骨の運動を理解するには輪状軟骨関節面とくにその長軸の XYZ 座標における方向が問題となる. その詳細なデーターは既述の平本論文にゆずる. 筋突起, 声帯突起の変位の相互関係については別項に記す.
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